行政書士に独学で受かる方法

随分大きなタイトルを書きましたが、平成30年度の行政書士試験に合格したので勉強方法等を書いて行きます。点数は238/300で、ギリギリ合格とかではないのでそれなりに信頼できると思います。

 

1. 勉強期間・時間

勉強期間はちょうど一年くらいです。studyplusで勉強時間をしており、総勉強時間は800時間ほどでした。受かる人はこの半分でも受かると思います。

独学の動機は金をかけたくなかったのと、授業を聞くのが得意ではなかったからです。授業聞くより本読む方が自分のペースにあった勉強になるので、より効率的であると僕は確信しています。

ただ、この勉強法で正しいと確信できる心の拠り所がないので、「自分は独学ができる」という自信がなければ厳しいかもしれません。

 

2. 教材等

独学で一番大事になる教材選びです。予備校に通っていれば考えることはないですが、一人だと色々自分で準備しなければなりません。

最初に言っておくと、いわゆる予備校本(一冊で行政書士の資格勉強ができる本。本屋の資格コーナーでよく見かけるやつ)は一冊も使ってません。そういう本が悪いとは言いませんが、行政書士試験に必要な法律は一冊にまとまるほど単純ではないです。確実に受かりたいなら、各試験教科の本をそれぞれ買うべきでしょう。

以下、僕が勉強に使用した本を羅列して行きます。なお、アフェリエイト登録のやり方がわからなかったので以下のリンクから購入しても僕の懐には一銭もはいりません。悲しい。

a.六法

 

ポケット六法 平成31年版

ポケット六法 平成31年版

 

 

法律を学ぶ上で六法はないのは論外です。デイリーでもポケットでもいいですから、必ず用意してください。普通の人は最新版を買うと思います。

b.憲法

憲法判例 第8版

憲法判例 第8版

 

司法試験の短答は判例さえ覚えれば憲法はいけるという話はあまりにも有名ですが、行政書士もその例にもれず、判例を知っていれば全ての問題に対応することができます。 八月革命とか知らなくていいです。

上に挙げた本は、判例百選などとは違い解説等は基本的についておらず、ただひたすら事案と判旨を挙げつつける形式のものです。僕はいらん解説は読みたくなかったのでこの本を進めますが、(いらん)解説が読みたければ別の本を読めばいいでしょう。

また、どうしても理論を知っておきたいなら芦部でしょうか。

 

憲法 第六版

憲法 第六版

 

 僕はこの本は一応読みましたが、理解したとは口が裂けても言えません。なお、行政書士試験には役に立ちませんでした。

c.民法

一番きつい科目です。覚える量が普通ではありません。一冊に民法がまとまっていてわかりやすい本で言えば、潮見先生の民法(全)や、最近でた本では松久先生他のオリエンテーション民法などでしょうか。

 

民法(全)

民法(全)

 

 

 

オリエンテーション民法

オリエンテーション民法

 

 

僕は民法に対する完璧な知識が欲しかったので、上記のようなまとまった本ではなく、各分野ごとの本を読みました。合計7冊読んでいます。流石にここまで読むのはやりすぎでしょうが、一応本の紹介をします。

(i)総則

民法は総則・物権・債権総論・債権各論・家族法に分けることが多いようですが、総則は佐久間先生の本しかないと思っています。

民法の基礎1 総則 第4版

民法の基礎1 総則 第4版

 

 最近新民法に合わせて改定されてこともあり、かなりオススメの一冊です。内容は民法に限らず法律初心者が読んで法律に慣れ親しむことができるように構成されており、最初に読む本として読みやすい上に、内容が浅いなどということはなく、深い部分も結構しっかり書かれており、総則はこれで困ることはなかったです。法学部で教科書として採用される例も多いようです。

(ii)物権法

 安永先生の本を読んでいました。

講義 物権・担保物権法 第2版

講義 物権・担保物権法 第2版

 

 道垣内先生の本も有名ですが、僕は読んだことないので内容は知りません。安永先生の本は前書きで述べられている通り法科大学院の未修者を想定して書かれているということで、やはり初心者がとっつきやすい内容になっています。全くの知識0で読むのは少し厳しいかもしれませんが、佐久間先生の本を読んだ後なら問題なく読めると思います。

また、判例を載せているのも面白い部分だと思います。基本書では結論だけ書いて省略しがちですが、事案と判旨がしっかり載っているのは読み応えがありました。

(iii)債権総論

 中田先生の本です。

債権総論 第三版

債権総論 第三版

 

正直この本はオススメしません。理由としては、内容が(行政書士を受けるだけなら)難解すぎるからです。 僕は大学生の春休みということもあり毎日時間が有り余っていたので読み進めることができましたが、試験まで時間が有り余っているわけではないならば、他の本を読むべきでしょう。

ただ、債権総論自体が難解なので、理解を諦める方が早いという説もあります。

(iv)債権各論

債権各論は、まず潮見先生の本を読みました。2冊でワンセットです。

基本講義 債権各論〈2〉不法行為法 (ライブラリ法学基本講義)

基本講義 債権各論〈2〉不法行為法 (ライブラリ法学基本講義)

 

 結構薄い本なので、サクサク進めることができます。ただその分、契約法の内容が不十分かもしれません。その分不法行為法は一冊割かれており、内容はしっかりしています。

僕はさらにもう一冊読んでいます。

民法II 第3版: 債権各論

民法II 第3版: 債権各論

 

理由は、先に挙げた潮見先生の内容が少し物足りなかったのと、そもそも潮見先生の本は新民法に対応しており、旧民法を学べなかったことにあります。平成30年度および平成31年度の行政書士試験は旧民法から出題されるようなので、最初っから内田先生の本を読めばよかったという学説があります。

内田先生の本は僕にとっては非常にわかりやすく親切に感じました。ただ、僕の法学部の友人曰くこの本には問題があるみたいです。よくわかりません。

(v)家族法

 窪田先生の本を読みました。

家族法 -- 民法を学ぶ 第3版

家族法 -- 民法を学ぶ 第3版

 

 二宮先生の本も有名でしょう。好きな方を選べばいいと思います。

窪田先生の本に関しては、非常に親しみやすい口調で内容が書かれており、肩の力を抜いて読んでいくことができる部分が特徴的です。いい意味で学術的ではないとでもいいましょうか。

 

以上が僕が試験を受ける上で読んだ民法の本です。勉強時間は合計で800時間と冒頭で述べましたが、民法が500時間くらいを占めています。明らかにやりすぎです。

 

d.行政法

この本以外ありえません。

行政法 第5版

行政法 第5版

 

 いわゆるサクハシです。この本を読むことによって、行政法を極めることができます。内容はまあまあ難しいですが、二回目読めば深い理解を得ることができます。判例ノートと一緒に読むとさらに極みに達することができます。

行政判例ノート 第3版

行政判例ノート 第3版

 

 僕は時間がなくて判例ノートは読んでいませんが、常日頃読みたいと思っていました。行政書士を受ける上で、行政法のウェイトは非常に重いですが、サクハシを読めば全てがなんとかなります。ただ、地方自治法だけはどうにもならないので、他の本を読んでください。

e.商法・会社法

 リークエのアレです。

会社法 第4版 (LEGAL QUEST)

会社法 第4版 (LEGAL QUEST)

 

 紹介しつつも僕はこれを五分の一くらいしか読んでません。会社法は捨て科目という風潮があるので、どうでもいいと思います。本番商法会社法は2/5でしたが、これでも僕の中では運ゲーに勝ったと思ってます。内容もつまんねえしな。

ただし、商法だけは条文だけでも読んでおくと気がまぎれるかもしれません。できるようになるかどうかは別として。

 

以上が使った基本書たちでした。直前期には問題集をやっていましたが、問題集はどれも似たようなものなので紹介は省略します。好きなのを買うといいさ。

 

3. 勉強方針

勉強し始めた当初は、行政書士には「余裕を持って」合格しようと思ってました。満点を本気で取るつもりさえありました。そういうつもりで勉強すれば、どんなに難解な部分でも、頑張って理解しようとする姿勢を貫くことができると思います。

そういう気概もあって、行政書士に合わせて勉強するつもりは始めからありませんでした。僕が自分で基本書を選ぶに際し、上であげた本を選んだ理由は「司法試験 基本書」と検索してお勧めされている本だからです。

これもまあ人それぞれだと思いますが、僕は特にインプットに時間をかけました。それぞれの本について自分なりにノートにまとめながら進めていきます。だいたい一冊百時間前後かけたと思います。

どの予備校に行っても、インプットよりもアウトプットに時間をかけるべきと教えているようです。今まで色々な行政書士勉強法のサイトを見て来ましたが、インプットに時間をかけろと教えるサイトは1つも見たことがありません。確かに、問題を解いて定着させた方が時間は短くて済むかもしれません。

ただ、僕は「行政書士に合格する」ことよりも法律学への純粋な好奇心があったのと、あと問題を解く上で間違えたくなかったので、インプットにかなりの時間をかけていました。

インプットに時間をかけると、不思議な効果がありました。最初から記述ができたことです。行政書士試験は記号と記述の両方がありますが、記述は何も対策していなくても最初から回答することができていました。本質的な理解に関わっているのではないかと思います。本番の点数も記述は56/60でした。4点落としたのは永遠の謎です。

ただ、「行政書士に合格する」ことだけが唯一かつ絶対の目標ならば、アウトプットに多くの時間をかけるべきでしょう。その方が合格するための知識は素早く定着します。

最後に、勉強する順番ですが、民法を最初にやることを勧めます。法律の中心になっていることと、あとから終わらないよりは最初にやるのが得策と思うからです。そのあとは行政法なり憲法なり好きな科目をやるといいでしょう。

基礎法学は(基本書を読めば)気づいたら身につきます。予備校本だとどうにもならないので、どうにかしてください。

一般知識は運ゲーです。普通の人は新聞やらテレビやらを見たり、あるいはセンター試験の政治経済をやるらしいです。僕は面倒だったのでやってません。

 

以上が僕が試験を受けた上での振り返りのようなものです。参考になれば幸いです。

移動法相・第三問

ブログが凄くやってみたかったので、やります。話せることは法律のことくらいです。

 

移動法相で模擬相談として、こんな例が用意され、僕が解説しました(用意したのは僕ではないです)。ざっくり言うと次のようなものです。

 

第三問: 隣人の騒音への対処法 

<事例>
相談者はアパートの住人。
相談者の隣人が、毎日夜遅くまで大音量で音楽を聴いている。相談者は何度か注意したが、相手は
「夜中に大音量で音楽を聴いてはいけない」なんていう条項は契約書のどこにもない、などと言って
一向にやめてくれない。どうすればよいか。

解答として、

α.大家を介して隣人に静かにするよう頼む(債務不履行構成)

β.直接隣人に静かにするよう頼む(不法行為構成)

という2つの方針を用意して、そこから論点として

α.について

① そもそも大家は隣人に対しなんらかの対策をするよう請求し、あるいは改善されないようならば隣人との賃貸借契約の解除をすることができるか

② (①が可能なことを前提として)大家は相談者に対し、隣人の騒音を辞めさせるような作為義務を負うか、すなわち相談者は、大家が隣人の騒音対策をしないことを理由に大家に対して損害賠償請求しうるか

β.について

③ 騒音を理由に相談者に対する隣人の不法行為が成立し、相談者は隣人に対して、709条に基づき損害賠償請求できるか

④ 相談者は隣人に対し、騒音の差止請求ができるか

をあげて、順次解説する形をとりました。

 

①は賃借人の用法遵守義務を前日の模擬相談でやったので、契約条項にない「騒音を出さないこと」が用法に当たるかの議論ができれば、解決はできるかとは思いましたが、それ以降に関しては一年生どころか二年生も授業でやってない内容であり、どうなんだろうと思いながら解説を考えていました。

 

α.

①民616条の準用する594条1項において、賃借人には用法遵守義務が課せられており、その不履行は同条3項により解除原因になりうることが言えます。

そこで、契約条項に無い内容でも用法と言えるかを考える必要があります。裁判例で「(賃貸人は、)もし、賃借人に右協同生活における社会通念上他の者が受忍すべき限度を超える違反行為があった場合にはそのものに対しその速やかな停止を求めるとともに、これに応じないときは、もはや賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為に該当するものとして、賃貸借を将来に向かって解除することができるものと解する」(東京北簡裁昭43年8月26日)とあります。これは、「社会通念上他のものが受忍すべき限度を超える違反行為」(ここでは限度を超えた騒音)が用法として言えると解釈していいでしょう。「賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為」は信頼関係破壊の法理を指していると考えて良さそうです。

さて、隣人の行為は上記基準を満たしているかどうかは、事案を見る限りわかりません。そこで、相談では騒音の態様について詳しく聞くとともに、大家が何らかの対応をとったのかどうかを聞く必要がありそうです。

 

②ここでは、大家が解除権を持つことを前提に(①の検討)、相談者は大家に対してその権利の行使を請求できるか、という話でした。賃貸人は賃借人に対し、使用収益させる義務を負っているかという問題で、民法601条が手掛かりになりそうです。事実裁判例(大阪地裁平成元年4月13日)でもその義務の不履行により損害賠償請求を認めており、①が認められた上で、大家に相談しても一向に改善しないような場合には、損害賠償の余地がありそうです。

 

β.

不法行為が成立するかにつき、最高裁では、「すべての権利の行使は、その態様ないし結果において、社会観念上妥当と認めれらる範囲内でのみこれをなすことを要するのであって、権利者の行為が社会的妥当性を欠き、これによって生じた損害が、社会生活上一般的に被害者において忍容するを相当とする程度を超えたと認められるときは、その権利の行使は、社会観念上妥当な範囲を逸脱したものというべく、いわゆる権利の濫用に当たるものであって、違法性を帯び、不法行為の責任を生ぜしめるものと言わなければならない」としています。(昭和47年6月27日)

社会生活上で他人に損害を与えることは多々あり、その全てが権利侵害となるわけではありません。それが権利侵害となるには、「社会生活上一般的に被害者において忍容するを相当トスる程度を超えたと認められる」ことが必要と言えそうです。いわゆる受忍限度論というものです。根拠に民法1条3項を挙げています。

今回の事案では、先ほども言った通り、騒音の態様が明らかでないため、不法行為が成立するかどうかはなんとも言えません。ただ、隣人の騒音で損害賠償が認められた裁判例は少なからず存在するみたいです。

④差止めの可否は、あまり触れませんでした。後ろに専門家(根元先生)が控えており、下手なことが言えなかったからです。

ただ、最高裁判例でも騒音の差止めは認められている例はあり(平成6年3月24日:工場騒音)、全くありえないというわけではないです。ただ、相当厳しいと思います。

 

こんな感じで解説を終えて、それなりに納得していただけたようでした。しかし、ここからが本題です。

ただ、僕は以下の点で疑問がありました。(解説では触れなかった部分です)

(i) ④の差止めが認められないならば、相談者の悩みが根本的に解決していないのではないか。すなわち、相談者の要求は「隣人の騒音をなくしてほしい」だったのに対し、②と③は賠償金がもらえるだけで、騒音がどうにもなっていない。

(ii) ③の論拠となる受忍限度論は現在は通説ではない。

 

特に(ii)についてはさも通説のように語ってしまったので後悔が残りますが、あまり気にしていません。どうせ結論は変わらないので。

ただ、(i)は結構厄介な問題です。考えられる手段としては、

a.大家の「使用収益させる義務」に対して履行の強制をする。

b.相談者の「使用収益する権利」を被保全債権として、大家の解除権を代位行使する(債権者代位権の転用)

c.差止め

くらいなものでしょうか。c.が認められないとなるとa.かb.ですが、僕はb.は正直認められないと思います。債権者代位権の転用が認められる場面は他に方法がない場面が多い気がするので、この場面では他に方法がある以上、安易に認めるべきではないと考えるからです。

a.については、間接強制とかで認容してもいいんじゃないかとも思います。ただ僕は民事訴訟法がわからないので、なんとも言えません。なので解説では触れないことにしました。誰か教えてください。

 

ひとまず以上です。長文失礼しました。